平成23年度の消費税改正を学ぶ前に、消費税の基本的な仕組みについて、おさらいしておきましょう。
単純な事例として、ある事業者が、100円の商品を仕入れ、得意先へ180円で販売したケースを考えます。
事業者は、本体価格とは別に仕入先に対して5円の消費税を支払い、得意先からは9円の消費税を受取ります。
この時、事業者の最終的な納税額は、得意先から預かった9円ではなく、仕入先へ支払った5円を控除した後の4円になります。
このように、預かった消費税から支払った消費税額を差引くことを「仕入税額控除」と呼びます。
この仕入税額控除の仕組みによって、消費税の最終負担者である消費者の負担額(このケースでは9円)と、消費までの前段階に係わった事業者の納税額の総合計額(仕入先の5円+事業者の4円)が合致するのです。
したがって、仕入税額控除額が増えるほど納税額は減ることになります。反対に、仕入税額控除額が減ると納税額は増加します。まずは、納税額と仕入税額控除額の関係を頭に入れておいてください。
仕入税額控除額の計算方法は、その事業者の課税売上割合によって異なります。
課税売上割合は、以下の算式で求めます。
現状の消費税法では、課税売上割合95%を境に仕入税額控除の計算方法が異なっています。
課税売上割合が95%以上の場合には、課税期間中の仕入税額の全額を控除可能、つまり仕入税額に関する調整計算は不要です。
一方、課税売上割合が95%未満の場合には、課税期間中の仕入税額の全額を控除することは認められず、個別対応方式又は一括比例配分方式のいずれかの方法を選択適用しなければなりません。
通常の事業会社では、毎年の課税売上割合が95%を大きく超えるため、仕入税額控除の調整計算は不要なケースが一般的でした。
しかし、今回の消費税改正によって、課税売上割合が95%以上であっても、課税売上高が5億円を越える場合には、仕入税額控除の調整計算が必須となりました。
従来から、課税売上割合が95%未満になる不動産業(土地の売却は非課税売上)や金融業(利息収入は非課税売上)の会計システムでは、仕入税額控除の調整計算を考慮してシステム構築されていますが、それ以外の業種については、会計システムへの影響を検討する必要があります。
次回は、この消費税法の改正が会計システムに与える影響について、解説していきます。
「改正消費税 個別対応方式と一括比例配分方式 その2」へのコメント
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