今回の消費税法改正で、課税売上高5億円以上の事業者については、仕入税額の一括控除が認められなくなりました。

この場合、個別対応方式と一括比例配分方式のどちらかを選択適用することになります。

一括比例配分方式の場合、課税仕入税額の総額に課税売上割合を乗じて、仕入税額控除の金額を算出します。

一方、個別対応方式に対応するためには、課税仕入の金額を

 ・課税資産の譲渡等にのみ要する課税仕入れ(課税取引対応)
 ・課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要する課税仕入れ(共通対応)
 ・その他の資産の譲渡等にのみ要する課税仕入れ(非課税取引対応)

  の3区分に分類します。

この個別対応方式における分類は、文章だけでは、誤解される方もいらっしゃるかもしれませんので、図表を用いて整理しておきます。

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従来から行われていた分類は、その取引自体が課税取引か非課税取引かによる区分でした。
例えば、賃借料の中でオフィス分を課税取引、社宅分を非課税取引に区分するようなケースです。

個別対応方式では、課税取引に区分されたものを、さらに売上との対応関係から
・課税取引対応  ・共通対応  ・非課税取引対応
の3種類に分類します。
この、売上との対応関係という視点は、従来、考慮されていなかったものです。

個別対応方式と一括比例配分方式は、企業の判断によって、有利な方法を選択適用できます。

一括比例配分方式を採用する場合には、既存の数値を用いて納税額を算出できますので、会計システム等の変更は不要です。
一方、個別対応方式を採用するためには、3分類の消費税集計ができるように、会計システムの見直しが必要になります。

一般事業会社では、課税売上割合が100%に近い会社が多いため、仕入税額控除から除かれる割合は数%分にすぎませんが、乗じる金額(仮払消費税の総額)が大きい場合、両方式の差額は数千万から数億円に上ります。
まずは、自社における両方式の差額を、概算計算で把握しておきましょう。

次回は、個別対応方式と一括比例配分方式の有利不利の判断方法について解説していきます。