前回は、個別対応方式及び一括比例配分方式に対応するための仕入取引に関する留意点をご説明してきました。
もう1点、注意していただきたいのが課税売上割合の算出です。
従来、課税売上割合が95%を超える場合には、仕入税額を全額控除できるため、95%を大きく超える場合には、課税売上割合の計算に厳密さは求められませんでした。
しかし、今後、仕入税額の全額控除が認められなくなると、課税売上割合のコンマ数パーセントの違いが、納税額に影響を与えるため、課税売上割合を正確に集計しなければなりません。
課税売上割合算出時の注意点としては、以下のようなものがあります。
●非課税取引と不課税取引の区分
収益が課税取引か否かの判断については厳格に行われていても、非課税取引と不課税取引の区分については曖昧なケースが見受けられます。
例えば
非課税取引・・・土地の譲渡、受取利息、商品券等の譲渡
不課税取引・・・助成金、受取保険金、受取配当金、
商品券等の発行(消費税基本通達6-4-5)
●有価証券の売買
課税売上割合の算出にあたっては、有価証券等の譲渡額の5%を分母に加算します(消費税法施行令第48条第5項)。
非課税になる有価証券等の範囲については、消費税基本通達6-2-1を参考にしてください。
●総額と純額
例えば、借上げ社宅の従業員負担額を社宅の賃借料と相殺処理する場合があります。しかし、消費税法上、住宅の貸付は非課税取引に該当します。
同様な事例で、実務上、厄介なのは、有償支給における消費税の扱いですが、判断基準として、下記の消費税法基本通達を参考にしてください。
消費税法基本通達
(下請先に対する原材料等の支給)
5―2―16
事業者が外注先等に対して外注加工に係る原材料等を支給する場合において、その支給に係る対価を収受することとしているとき(以下5―2―16において「有償支給」という。)は、その原材料等の支給は、対価を得て行う資産の譲渡に該当するのであるが、有償支給の場合であっても事業者がその支給に係る原材料等を自己の資産として管理しているときは、その原材料等の支給は、資産の譲渡に該当しないことに留意する。
(注) 有償支給に係る原材料等について、その支給をした事業者が自己の資産として管理しているときには、支給を受ける外注先等では、当該原材料等の有償支給は課税仕入れに該当せず、また、当該支給をした事業者から収受すべき金銭等のうち原材料等の有償支給に係る金額を除いた金額が資産の譲渡等の対価に該当する。
課税売上割合を仕入税額に乗じるという消費税の計算ロジックは、課税売上割合の小さな変化が、最終的な納税額に大きな影響を与えます。
企業規模が大きくなると、この影響は甚大で、課税売上割合の小さな集計漏れが、納税額に予想以上の影響を与えるため、私も、たびたび肝を冷やしています。
皆様も、課税売上割合の集計手続きについて、再度、確認しておくことをお勧めします。
【追記】
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