昨日、発売された税務弘報2013年9月号(中央経済社) の特集 『消費税率アップ総力特集』 に、『税率アップ対応プロジェクトをはじめよう!』 という記事をPwCの荒井優美子先生と共作で寄稿しました。
読者の方がいらっしゃいましたら、ご一読いただければ幸いです。

20130807

私の記事はさておき、今月の税務弘報の消費税特集は充実しています。
特集の目玉は、『業種別の難問を総点検しよう!』という座談会です。
56ページ(!)に及ぶボリュームを、恐らく1日の座談会で消化されたのでしょうから、参加された先生方の御苦労がしのばれる企画です。

この座談会で興味深いのは、税率改正時に生じる出荷基準と検収基準のズレに関する論点です。
これは、出荷基準を採用する売り手が3月31日に5%を適用して販売した商品を、検収基準を採用する買い手が4月1日以降に検収した場合、仕入費用について8%の税額控除ができるのかという論点です。

この点について、濱田桂先生は、インボイス方式を採用していない我が国の消費税法では請求書記載額を控除するという規定はなく、自社の検収基準にしたがって計上した金額で8%分控除すればよいと主張されます。

一方、熊王征秀先生と藤曲武美先生は、条文上の根拠はないものの明らかに旧税率とわかっているものは、旧税率で仕入税額控除すべきと主張されています。

私の意見は、「理論的には8%で控除可能であるが、実務的には相手先の請求書の記載額に合わせて処理する」というどうにも歯切れの悪いものです。

まず、現行の消費税法上は、相手側の請求書記載額が根拠になるのではなく、濱田先生が指摘されているように「課税仕入れに係る支払対価の額に百五分の四を乗じて算出した金額」(消費税30①)を控除することになっています。

さらに、課税仕入れの時期については「資産の譲渡等の時期の取扱いに準ずる」(消費税基本通達11-3-1)とされ、資産の譲渡等の時期のうち棚卸資産の引渡し日は、「事業者が継続して棚卸資産の譲渡を行ったこととしている日によるものとする」(消費税基本通達9-1-2)と規定されています。
したがって、検収基準を継続して適用しているならば、検収時が資産の譲渡等の時期になるため、その時点で適用される消費税率を使用することになります。

その一方で、自社の費用の認識基準を、税務当局に対して主張できるほど厳格に運用している会社がどれほどあるでしょうか。
そのような会社は、上場レベルの大企業の一部に過ぎず、大多数の中堅企業においては、自社の費用の計上基準を主張するよりも、相手先から送られてきた請求書の記載に準じて会計処理をする方が実務的な対応になるでしょう。

【追記】
2014年1月20日に国税庁から新たなQ&Aが公表されました。
http://iwatani-c.cocolog-nifty.com/blog/2014/01/qa-b85e.html

【ご案内】
消費税改正と会計システムへの影響を解説するセミナーを開催しております。
受講ご希望の方は、下記のリンクからお申込みください。

「消費税改正の概要とシステム対応」 (主催 みずほセミナー)
(追加開催分)日時 2014年3月14日(大阪会場) 13:00~17:00

このエントリーをはてなブックマークに追加