イースト・プレスさんから、 「競争優位を実現する ファイブ・ウェイ・ポジショニング戦略」 を献本していただきました。
私も、気になっていた本でしたので、絶妙なタイミングで助かりました。
なぜ、この本が気になっていたかと申しますと、それは本書の帯に使われている星野リゾート社長の星野佳路氏と関係します。
星野氏は多くの書籍を著していますが、その中でも、星野氏が経営を行う際に参考になった基本書を紹介した 「星野リゾートの教科書」 (日経BP社)はベストセラーになっています。
この本では、経営やマーケティングの定番書を中心に紹介されているのですが、その中に、一冊だけ邦訳されていない原著がありました。
それが "The Myth Of Excellence " であり、その本を邦訳したのが今回、紹介する「ファイブ・ウェイ・ポジショニング戦略」です。
(手に入りづらいと読みたくなるもので、邦訳版を手掛けたくなる編集者のお気持ちがよくわかります)
星野氏の著作で使われていた、原著のハードカバー版の表紙をご覧になれば、思い出される方も多いのではないでしょうか。
原題中の MYTH(俗説)とは、「企業はすべてにおいて一流を目指さなくてはいけない」という思い込みであり、そのような思い込みが企業に誤った選択をさせています。
本書が説く、ファイブ・ウェイ・ポジショニングは、現代企業における共通の悩みである商品のコモディティ化を防ぐための方法論です。
まず、経営要素を 価格・サービス・アクセス・経験価値・商品 の5つの要素に分類し、さらに各要素における自社のポジションを3つのレベル レベルⅠ(業界水準)、レベルⅡ(差別化)、レベルⅢ(市場支配) に区分します。
コモディティ化に陥らないためには、 「1つの要素で市場支配を、別の1つで差別化を、残り3つで業界水準をとればいい」 と説き、資源を有効に活用するためにすべての要素のレベルを上げるべきではないと主張しています。
星野氏自身による後書きでは、星野リゾートでは、経験価値を第1位の要素とし、アクセスで差別化をはかる戦略を選択した旨が記されています。
経営資源を要素に分けるだけではなく、そこに重み付けのルールを示した点に、本書のオリジナリティがあります。
米国ベストセラーの例に洩れず、多くの事例を取り混ぜながら解説されています。
ジャンルが一気に変わってしまいますが、「星野リゾートの教科書」以上に、「手に入らないので読みたくなる本」 ばかりが紹介されている書籍があります。
その書籍は、 「いま、世界で読まれている105冊 2013」 (テン・ブックス)です。
この本は、各国言語の翻訳者や研究者延べ83名が、63カ国の現地語で書かれた未翻訳書籍を紹介するものです。
英語圏の書籍と違い、原著を入手することもままならない本ばかりですが(入手できても読むことはできない!)、紹介文を読んでいるだけでも興味がわくものばかりです。
例えば、ベルギーで出版された「ハチミツ色の肌」は、韓国から養子としてベルギーへ移住したマンガ作家の自伝小説です。
朝鮮戦争の際に両親を失った子供たちを海外の養子に送りだす政策がとられ、英仏に続いてベルギーが大きな受け皿になっていたという事実を、私は知りませんでした。
この本を読んでいると、言葉や文化が違っていても、人々が考えることや悩みは共通していることに気付かされます。
世界の広さと狭さを同時に実感できる素晴らしい書籍ですので、ご一読をお勧めします。
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