8月の会計士試験(論文)及び税理士試験も近づき、受験生の方々は追い込みの時期でしょう。

会計士試験及び税理士試験受験生におすすめの電卓といえばカシオとシャープの2社にしぼられますが、最終的にどちらがおすすめかという論点について、今回は結論を出したいと思います。

【当ブログの結論】 受験生ならばカシオの電卓を使用すべき
(記事後半に追記があります 2014.10.11)

「慣れてしまえばどっちも同じ」という意見に、当方は与しません。
以下に、その理由を述べます。

カシオとシャープの電卓の違いは、定数計算における入力方法にあります。

定数計算とは、一定の決まった数字の計算を繰り返す際に入力を省略する機能です。
シャープ(及びカシオ以外のほとんどのメーカー)の場合、定数計算の対象は入力順で自動的に決定し、あとは「=(イコールキー)」を繰り返し押していきます

SHARPの電卓の定数計算方法
http://cs.sharp.co.jp/faq/qa?qid=117620

それに対してカシオの電卓では、+、―、×、÷の四則演算期キーを2度押すことによって定数を決定し、それから「=」を繰り返し押していきます。

CASIOの電卓の定数計算方法
http://casio.jp/dentaku/info/chair/upper03/

定数計算が効果を発揮するのは除算で使用する時なので、百分比を算出する事例で両者のキー操作の違いをみてみましょう。

「定数計算における電卓入力の違い (シャープ VS カシオ)」

この事例のキー入力だけを見れは、シャープの方が1操作少ないので効率的に感じるかもしれません。しかし、実務においてはカシオの方が圧倒的に便利です。

なぜなら、実務で除算の定数計算を行う際に分母の数が事前に与えられるケースは稀だからです。
分母の数を一旦、計算してから除算の定数計算を行う場合、シャープの電卓はメモリー機能を使わざるを得ませんが後段の追記をご確認ください)、カシオならば、メモリーを使わなくても除算の定数計算ができます

先ほどのクラスの人数の事例を使って説明しましょう。
事例では3組の合計数150人が最初から与えられていましたが、この合計数が提示されていなかったとします。

まず、3組の合計人数を計算します。
45 + 75 + 30 = 150

シャープの場合、この合計の150人を計算してから、そのまま定数計算に入ることができません。そこで、この150人という計算結果をメモリーに記録してから、
45 ÷ MR = 0.3
という手順になります。

それに対して、カシオの場合は、先ほどの150の結果が出たところで
÷ ÷ 45 = 0.3
というように、メモリーを使わずに計算が続けられます。

一方、シャープ派の方々からは、
「そのような差があっても、メモリー機能を使えば解決できるのだから問題ないだろう」
という反論があろうかと思います。

しかし、計算の正確性から、メモリー機能の使用は極力避けるべきです。
それは、電卓のメモリーキーの設定が不十分だからです。

現在の電卓に設けられているメモリーキーは4種類
「MC」 メモリー・クリア、メモリー値をクリアする
「MR」 メモリー・リコール、メモリー値を表示する
「M+」 メモリー・プラス、計算結果をメモリーに加算する
「M-」 メモリー・マイナス、計算結果をメモリーから減算する

本来ならば、計算結果とメモリーを置き換える「Replace Memory」のキーを設けるべきなのですが、その機能は省略され「M+」キーで代替する仕様になっています。

そのため、先ほどの事例のように計算値をメモリー値に置き換える際には、その前に「MC」キー(または「ON」キー)でメモリーをクリアする手続きが必須となり、この手順を失念することで計算ミスが生じるのです。
さらに、通常の電卓は「MR」キーでメモリー値を呼び出すまで、メモリー値を目視で確認できません。

つまり、カシオとシャープの電卓の差を、単に定数計算の手順の違いと捉えるのは本質を見誤っています

カシオの電卓は「計算結果をメモリーを使わずに除算の分母に組込める」というシャープの電卓にはない機能を有していると捉えるべきなのです。
この機能は、同じ数字が連続する定数計算だけではなく、除算全般で使えるため使用頻度が高まります。

【追記 2014.10.11】
読者のタカノ氏からのコメントで、シャープの電卓も、下記方法を用いれば除算の分母を固定して按分計算ができることを教えていただきました。

45 + 75 + 30 ÷ =
45 =
75 =
30 =

シャープの電卓には【÷】【=】のボタン操作の逆数計算という機能があり、この機能で表示数の逆数を算出し、それを乗じることで前述した按分計算をメモリーを使わずに計算できるそうです。
(シャープ電卓の取扱説明書)
http://www.sharp.co.jp/support/e_calc/mndl_list.html

したがいまして、当初記載したシャープとカシオ電卓の機能の違いは誤認でしたので、両者の優越を判断する根拠にはなり得ません。

ここで、あらためて、機能による違いはないことを前提として当ブログの結論を出しますと、やはりカシオの電卓をおすすめします。

カシオとシャープの定数計算の設計思考には根本的な違いがあります。
それは、シャープの定数計算は「入力の順序に依拠」しているのに対して、カシオの定数計算は「順序にかかわらず任意」に開始できるようになっています。
実務において定数計算を行う局面では、任意のタイミング(四則演算キーを2度押す)で定数計算に入れる方が重宝するため、私としてはカシオ方式をおすすめする次第です。

(主観による要素が強い結論になってしまいましたが、私的なブログということでご容赦ください。)

【追記 終わり】

ここまで説明すると、次に、このような疑問が浮かぶのではないでしょうか。
「カシオ方式が優れていたとしても、それならば、なぜ、現在、発売されている電卓のほとんどがシャープ方式の定数計算機能を採用しているのか?」

カシオ方式の方が機能的に有利なことが明らかであっても、それは「使いこなせるのならば」という条件付きであり、ほとんどの電卓購入者は取扱説明書を読まないため、感覚的にわかりやすいシャープ方式が一般化(つまりモジュール化)したものと推察されます。
これは、工業製品を製造するメーカーとしては妥当な判断です。

しかし、会計士、税理士の受験生の立場から見れば、カシオの電卓に慣れてしまえば、他の電卓にはない機能が手に入り、他の受験生と差別化できる ことを意味します。

電卓の使い勝手は慣れによる要素が大きいのが確かですが、上記の理由から、まず最初にカシオの電卓を使うことをおすすめします

一方、受験生ではなく、経理実務者の立場にたつと、異なる点が気になります。
それは、シャープとカシオのキー配置の違いです。
シャープの電卓は「0」のキーが「1」の真下に位置しています。

シャープの電卓のキー配置

それに対して、カシオの電卓は「0」のキーが「1」のキーの左側、「AC」キーの下に位置しています。

カシオの電卓のキー配置

つまり、シャープのキー配置は、パソコンに付いているテンキーと同じ配置になっているのです。

会計士は社外で仕事をすることが多いので基本的にノートパソコン(+付属テンキー)を使用しますが、税務を中心とした会計事務所では、現在でもデスクトップにテンキー付きのキーボードを利用しているところが多いと思います。そこで、日常業務で使うテンキーと同じ配置の方が望ましいというニーズが発生します。

また、会計士試験の科目と異なり、税理士試験では配賦計算や百分比を算出することが少ないため(税法で按分計算がでてくるのは相続税ぐらい)、前述した定数計算の影響が軽減されます。
そこで、キー配置の使いやすさからシャープの電卓という選択肢もあるでしょう。
(ただし、カシオの電卓でも機種によってシャープと同じキー配置のものがありますから、そちらを利用する手もあります。)

【2017/8/2 追記】
コメント欄でノリ氏に御指摘いただきましたが、「0」の位置はメーカーによる違いというよりも、機種による違いと考えた方が適切でしょう。
【追記 終わり】

ということで、当ブログの結論をまとめますと、

除算の分母をメモリーを使用せずに置き換えられるカシオの電卓の方が機能的に優れている

任意のタイミングで定数計算を始められるカシオの電卓の方が使い勝手が良い (修正加筆 2014.10.11)

 

会計士試験(及び業務)では除算の定数計算を行う機会が多いので、カシオに慣れていた方が有利である。
(原価計算の配賦、部門別会計における経費按分、財務比率の百分比計算等)

ただし、業務でテンキー付きのキーボードを使用している場合には、電卓をテンキー配列と合わせておくのも妥当な判断である。

シャープ派の方々にとっては、多くの反論があろうかと思います。
私自身、シャープの電卓を使ったことがないため、見落としている機能(パーセント・キーなど)があると思いますので、お気づきの点があればご指摘ください。

【追記】
受験生を悩ませる、もうひとつの疑問
「電卓は右手で打つのか左手で打つのか?」
についても、新しいエントリー を追加しました。
こちらも、ご参照ください。