税理士の吉澤大先生から、新刊 『ケチな社長はなぜお金を残せないのか?』(以降「ケチな社長」)を献本していただきました。
これは、吉澤先生の「社長シリーズ」(?)の1冊かと思って、前作「社長のお金の残し方」と一緒に写真を撮ってみたのですが、出版社が違っておりました(前作は日本実業出版、本作はかんき出版です)。
本書は、経営者の「思い込み」によって、正しい損得計算ができない事例を取り上げ、その誤りの原因を解説していきます。
取り上げられている15個のテーマは、いずれも企業経営に直結するもので、中小企業経営者ならば、一度は頭を悩ませる問題ばかりです。
今回、比較の対象とするのは、現在、ビジネス書のベストセラーを快走している菅井敏之氏の『お金が貯まるのは、どっち!?』(以降「お金が貯まる」)です。
既に30万部を超える大ヒット作です。
先日、編集者の方と話している時に、この手の書籍は今までにもあったのに、なぜ、この本がベストセラーになったのかが話題になりました。
「お金」系の書籍はあまたありますし、 「2択」という編集もさほど珍しいものではありません。
ヒットというのは様々な要素の複合的な結果ですが、私が感じたのは文章のリズムの良さです。さらっと読めて、お得感があるのが多くの読者に支持されたのでしょう。
それに対して、「ケチな社長」も「2択」という要素を取り入れていますが、読みやすさにダマされてはいけません。こちらの2択は「深さ」が売りです。
例えば、Q6に「そもそもお金を残すなら、「個人で」VS「会社に」、どっち?」という問いがあります。通常の税金の本ですと、この論点については役員報酬額の調整で話を片付けてしまうところ、その先の「使い道の自由度」にまで言及してから結論を結んでいます。
同様にQ11「銀行から有利な資金調達をするなら、取引するのは「メイン一行だけ」vs「複数行」、どっち?」という問いも、通常ならば金利交渉のために複数行が望ましいで終わってしまうところ、年商規模別に取引すべき金融機関の数を明示したり、具体的な金利引き下げ交渉の手順について言及するなど、回答の深さが他の書籍とは、まったく違います。
本書を読んで、どこが類書と違うのかを楽しむのが「ケチな社長」の通な楽しみ方でしょう。
個人向けに書かれた「お金が貯まる」と法人経営者向けに書かれた「ケチな社長」は、そもそも読者対象が異なりますが、「お金が貯まる」からはベストセラーの妙味を、「ケチな社長」からは税務判断の深さを味わうのがお薦めの読み方です。
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