消費税の軽減税率が導入される平成31年10月1日まで、残された期間は1年半となりました。

いささか旧聞に属しますが「消費税の軽減税率制度に関するQ&A(制度概要編)」「同 (個別事例編)」が1月に改正されましたので、拙書「消費税軽減税率導入とシステム対応」の補足情報として改正点をまとめておきます。

【制度概要編】
改訂されたのは以下の2つのQ&Aです。

(飲食料品を譲渡する際の包装材等取扱い)
問5
通常、食品や飲料を 譲渡する場合容器包装を使いますが、これら容器等の取扱いはどのようになりますか。【平成 30 年1 月改訂】

この問5は、食品の販売に付帯して通常必要なものとして使用される包装材料等は軽減税率の対象になるが贈答用の包装のように別途対価を定めているものは軽減税率の対象にならないことを解説しています。
このQ&Aに以下の注書きと参考とする個別事例として【個別事例編】問65「効果な容器に盛り付けられた洋菓子」が追加されています。

(注) 包装材料等の販売者が、飲料メー カに販売する缶やペットボル、またスーパー等の小売店に販売するトレーは、容器そのものの販売ですので軽減税率は適用されません。

問8 「飲食に用いられる設備」(飲食設備) とは、どのようなものですか。【平成 30 年1月改訂】

内容に変更はなく、参考としている個別事例の項目番号に修正が行われていいます。

【個別事例編】
以下の7つの個別事例が追加されており、それにあわせて問の項目番号も修正されています。

(コーヒーの生豆の販売)
問5
当社は、コーヒーの生豆の販売を行っていますが、軽減税率の適用対象となります
か。【平成 30 年1月追加】

コーヒーの生豆は「食品」に該当し、軽減税率の対象になります。

(カタログギフトの販売)
問 30
当社は、下の取引図のとおり、贈答を受けた者(受贈者)がカタログに掲載された商品の中から任意に選択した商品を受け取ることができる、いわゆるカタログギフトの販
売を行っています。当該カタログギフトには、食品と食品以外の商品を掲載しており、受贈者の方は食品を選択して受け取ることができます。 このカタログギフトの販売に適用される税率は、どのようになりますか。【平成 30 年1月追加】

この問には参考図があるのですが、事例におけるカタログギフト販売は「飲食料品の譲渡」に該当するのではなく、カタログギフト受贈者が選択する商品を手配する一連のサービスの「役務の提供」にあたり軽減税率の対象になりません。

(食品の加工)
問 33
当社は、取引先からコーヒーの生豆の支給を受け、焙煎等の加工を行っています。当社の行う加工は、軽減税率の適用対象となりますか。【平成 30 年1月追加】

コーヒー豆の生豆の加工は役務の提供に該当するため軽減税率の対象になりません。

(配達先での飲食料品の取り分け)
問 59
当社は、味噌汁付弁当の販売・配達を行っています。弁当と味噌汁を配達する際には、配達先で味噌汁を取り分け用の器に注いで一緒に提供していますが、この場合の味噌汁付弁当の販売は、ケータリングに該当しますか。【平成 30 年1月追加】

「味噌汁を取り分け用の器に注ぐ」という行為は、味噌汁の販売に必要な行為である「取り分け」に該当し、ケータリングに該当しません。したがって、味噌汁付弁当の全体が軽減税率の適用対象となります。

(一万円以下の判定単位)
問 67
当社では、紅茶とティーカップを仕入れてパッケージングし、セット商品として小売事業者に卸売販売しています。販売に際しては、100 個単位で販売しており、販売価格を 100,000 円(税抜き)としています。
この場合、軽減税率の適用対象となる一体資産かどうかの判定に当たり、一体資産の譲渡の対価の額(税抜き)が 10,000 円以下かどうかは、どのように判定することになりますか。【平成 30 年1月追加】

一体資産の譲渡の対価の額(税抜き)が 10,000 円以下かどうかは、セット商品1個当たりの販売価格で判定するため、この事例ではセット商品1個当たりの税抜き販売価格は、1,000 円(100,000 円÷100 個)となり、一体資産の譲渡の対象になります。

(軽減税率の適用対象となる商品がない場合)
問 84
当社は、日用雑貨の卸売を行う事業者です。当社では、軽減税率の適用対象となる商品の販売がありません。これまで、現行の制度における記載事項を満たす請求書等として、下記のような請求書を取引先に交付しています。
軽減税率制度の実施に伴い、平成 31 年(2019 年)10 月から、当社が交付する請求書の
記載内容に変更はあるのでしょうか。【平成 30 年1月追加】

平成 31 年10 月から、仕入税額控除の要件として保存すべき請求書等(領収書も含みます。)には、現行の記載事項に加えて「軽減対象資産の譲渡等である旨」及び「税率ごとに合計した課税資産の譲渡等の対価の額」が追加されています(改正法附則 34②)。
しかし、販売する商品が軽減税率の適用対象とならないもののみであれば現行の請求書の記載事項のままで問題ありません。

(相手方の確認を受けた仕入明細書等)
問 86
当店は、食料品及び日用雑貨の小売りを行っています。これまで、仕入先への代金の支払いに当たり、下記のように請求書等保存方式における請求書等としての記載事項を満たす仕入明細書を作成し、仕入先の確認を受け、保存しています。
今後、平成 31 年(2019 年)10 月からは、区分記載請求書等保存方式における請求書等としての記載事項を満たす仕入明細書を作成し、保存したいと考えています。この場合、当店は、どのような対応が必要でしょうか。【平成 30 年1月追加】

現行の記載事項に加えて以下の下線部分の事項を追加する必要があります。(改正法附則 34②))。
㋑ 書類の作成者の氏名又は名称
㋺ 課税仕入れの相手方の氏名又は名称
㋩ 課税仕入れを行った年月日
㋥ 課税仕入れに係る資産又は役務の内容
(課税仕入れが他の者から受けた軽減対象資産の譲渡等に係るものである場合には、資産の内容及び軽減対象資産の譲渡等に係るものである旨
税率ごとに合計した課税仕入れに係る支払対価の額(税込価格)

20170313


「消費税軽減税制度に関するQ&A」改正点のまとめ