消費税の申告にあたり、個別対応方式と一括比例配分方式どちらが有利なのでしょうか。
それは、各社の取引内容によって異なるため、一概に決めることはできません。
そこで、両方式の違いが表れる典型的な事例をご説明することで、方式ごとの特徴を理解していきましょう。
●個別対応方式が有利な場合
例えば、土地の売却は非課税売上になりますが、それに対応する仕入が土地(非課税仕入)しかなかったとします。
この事例では、課税仕入は全て課税売上に対応しますので、個別対応方式を採用した場合には、仕入税額の全額が控除できます。
(注意:現実にはあり得ませんが、この事例では課税売上と非課税売上に共通して発生する仕入はなかったと仮定しています。)
しかし、このケースで一括比例配分方式を適用すると、仕入税額のうち非課税売上に対応する割合分が、仕入税額控除の対象から外れてしまいます。
つまり、個別対応方式を選択した方が、納税額が減少し、有利になるのです。
非課税売上に対応する課税仕入が多い場合には、一括比例配分方式を採用した方が有利になるケースがあります。
例えば、マンション等の賃貸不動産を購入し、住宅として貸付けた場合を考えてみましょう。
まず、住宅貸付に係る収入は非課税売上です。物件購入年度などは賃貸収入よりも対応する課税仕入が大きい場合があります。
このような状態で、一括比例配分方式を適用すると、本来、非課税売上に対応する仕入額の一部を仕入税額控除の対象に含めることが可能になります。
ただし、一括比例配分方式を採用した場合には、2年間の継続適用が求められる点に注意してください(消費税法第30条第5項)。
今回の事例は、いずれも極端なケースですが、実際の会社において両方式のどちらが有利になるかは、今回の事例の複合的な影響によるものです。まずは、極端なパターンにおける計算方式の影響を理解しておくことが大切です。
次回は、個別対応方式と一括比例配分方式を適用する際の留意点について解説していきます。
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