新年明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。

と新年のご挨拶に引き続き、お詫びがございます。

昨年末、 『旬刊 経理情報』 2015年12月20日号に寄稿した『消費税「リバースチャージ方式」への対応上の留意点』 の記事中に誤りがありました。

20151211

消費者向けの電気通信利用役務の提供は、登録国外事業者分のみ仕入税額控除の対象になるのですが、その対象になるのは登録国外事業者として登録された以降の取引に限定されます。
その点について次のように記述しました。

(注)登録国外事業者の取引が仕入税額控除の対象になるのは、国税庁長官の登録を受けた以降の取引である。したがって、登録以前における取引については仕入税額控除の対象にならない点に留意する(改正法附則38①)

お読みいただければわかるように、登録された以降の取引が対象になるのですから対象にならないのは「登録以前」ではなく「登録」の取引です。

読者の方からの指摘で気付きまして、旬刊経理情報の2016年1月10/20合併号で訂正記事を掲載していただくことになりました。
ご迷惑をおかけして申し訳ございませんでした。

ご指摘いただいてから、間違えた原因を確認してみると、なかなかややこしい論点にぶつかりました。

この注記は国税庁が公表している「国境を越えた役務の提供に係 る消費税の課税の見直し等に関するQ&A」 問33 (登録日以前の「消費者向け電気通信利用役務の提供」の仕入税額控除)を参考にして記載したものだったのですが、この問33には次のように書かれています。

問33 インターネットで確認したところ、相手事業者が登録国外事業者であることを確認できました。登録年月日以前にも同じ国外事業者から役務の提供を受けていますが、遡って仕入税額控除は可能ですか。

【答】
仕入税額控除を行うことはできません。

登録日の取引は仕入税額控除の対象になりますから、厳格にとらえるならば「登録年月日以前」の取引について聞かれた問いに対して、そのすべてを対象外と答えるのは誤りになります。

法律用語では、基準点を含むか否かで「以前」「前」「以後」「後」というように厳格に使い分けられていますが、「前」「後」といった表現を通常の文章に使うと不自然に感じる場合があります。
例えば、「今日」より前のことを「今日前」と表現するのは不自然なため、通常は「今日以前」と表現し、その際には基準点が含まれるか含まれないかは特段の論点になりません。
基準点を含まない大小を表わす単語として「未満」という言葉がありますが、この単語は量の大小を表わすものであり、日本語には時間の経過を表わす同義の単語がないことも原因と思われます。

このQ&Aは一般の方を対象としているため、ここで用いられている「以前」も、日常用語として使われていると考えられます。
(実際、当該Q&Aの問いの後半では、正確な表現で対象取引を規定しています)

それに対して、当方の原稿は会計の専門家を対象としたものですから、法律用語に準じて正確に表現すべきであり、Q&Aにおける「以前」という単語をそのまま使うのではなく、「前」に置き替えるべきでした。

あらためて、読者の方々に、お詫び申し上げます。

このエントリーをはてなブックマークに追加